キャリアアップ助成金

第1 現行制度の概要

正社員化コースの令和5年11月29日改定

(1) 助成金額の見直し

1人57万円(6か月) ⇒ 1人80万円(第1期6か月40万円 第2期7-12か月40万円)

(2) 有期雇用労働者の要件緩和

6か月以上3年以内 ⇒6か月以上
なお、有期雇用期間が通算5年を超えた有期雇用労働者については、助成額は「無期から正規」の転換と同額の1人40万円(6か月、6か月)とする。

(3) 正社員転換制度の初めて加算

20万円加算

(4) 勤務地限定・職務限定等の制度を作り、転換

(最初だけ)9.5万円 ⇒40万円

(3)、(4)の加算措置について、「正社員転換制度」または「多様な正社員制度」を新たに設けた日と当該雇用区分に転換した日のいずれも同一のキャリアアップ計画期間に含まれている必要があります。

  • 就業規則、有期契約社員就業規則(転換制度が規定されないもの)の規程 R5.10.1
  • キャリアアップ期間開始日例 R6.2.1
  • 「正社員転換制度」または「多様な正社員制度」を新たに設けた日 R6.2.15
  • 当該雇用区分に転換した日R6.4.1

現行制度の助成額等

有期契約労働者等を正規雇用労働者等に転換又は直接雇用した場合に助成する。

支給額

① 有期→正規:1人当たり【80万円】第1期6か月40万円 第2期7-12か月40万円
   ( )は大企業    (【60万円 】第1期6か月30万円 第2期7-12か月30万円)

② 無期→正規:1人当たり【40万円】第1期6か月20万円 第2期7-12か月20万円
(【30万円 】第1期6か月15万円 第2期7-12か月15万円)

①、②を合わせて、1年度1事業所当たりの支給申請上限人数は20人まで

※多様な正社員(勤務地限定・職務限定・短時間正社員)へ転換等した場合には正規雇用労働者へ転換等したものとみなします。

主な加算措置

●正社員転換制度の初めて加算 1事業所当たり1回のみ

 20万円(15万円)

●多様な正社員(勤務地限定・職務限定・短時間正社員)へ転換等した場合

 1事業所当たり1回のみ40万円(30万円)

●派遣労働者を派遣先で正規雇用労働者として直接雇用する場合

 1人当たり28万5,000円大企業も同額

●対象者が母子家庭の母等または父子家庭の父の場合

 ①:1人当たり95,000円、②:47,500円<60,000円>(大企業も同額)

第2 正社員化コースの流れ

1.キャリアアップ計画の作成

(正社員化コース)期間契約社員の採用は、キャリアアップ計画の作成・提出の前でもいいです。また、就業規則の正社員化の規程も前にあってもいいです。

2.キャリアアップ計画の提出

管轄ハローワーク(県によっては労働局助成金センター)へキャリアアップ計画の提出をします。
添付書類ではないのですが、就業規則、有期契約社員就業規則(転換制度が規定されないもの)を添付して、計画との整合性を見てもらってください。

3.キャリアアップ計画の認定

キャリアアップ計画が管轄ハローワークから認定印が押されて事業主へ郵送されてきます。
支給申請時の添付書類です。全ての写しを事務所に送ってもらってください。

4.就業規則に転換制度を規定

「試験等の手続き、対象者の要件、転換実施時期」を規定して、管轄労働基準監督署へ届出します。(10人未満の事業所では申立書でも可)

5.取組の実施

就業規則に基づき、契約後6か月以上の有期契約労働者を正規雇用労働者に転換することです。
転換時(前)に面接評価、(昇格試験)をしてもらいます。

6.支給申請

【第1期支給申請】

正社員としての6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内に支給申請してください。
40万円と初めて加算20万円の支給申請

【第2期支給申請】

正社員としての転換後7か月から12か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内に支給申請してください。
40万円の支給申請

第3 「キャリアアップ助成金」における用語の定義(抜粋)

キャリアアップ計画 「有期雇用労働者等のキャリアアップに関するガイドライン~キャリアアップ促進のための助成措置の円滑な活用に向けて~」(以下「ガイドライン」という)に規定する「キャリアアップ計画」をいいます。

[山上コメント] 「キャリアアップ計画」を提出して、受理されたキャリアアップ計画期間中の正社員転換が助成金の要件です。期間の上限は5年間で、すでに有効期間が切れてしまっているものもあるので、ご注意ください。

有期雇用労働者 期間の定めのある労働契約を締結する労働者(短時間労働者および派遣労働者のうち、期間の定めのある労働契約を締結する労働者を含む)をいいます。

[山上コメント] 転換等の時期(令和4年10月1日)によって支給要件が異なります。詳細は第5 令和4年度改正点を参照してください。

無期雇用労働者 期間の定めのない労働契約を締結する労働者(短時間労働者および派遣労働者のうち、期間の定めのない労働契約を締結する労働者を含む)のうち、通常の労働者(正規雇用労働者、勤務地限定正社員、職務限定正社員および短時間正社員)以外の者(通常の労働者に適用される労働条件が適用されていないことが確認できる者をいいます。

[山上コメント] 有期雇用労働者から転換して、正社員にしたと会社は思っていても、就業規則通りの賞与、昇給が無いと無期雇用労働者とみなされて、不支給となる場合があります。

正規雇用労働者 次のイからホまでのすべてに該当する労働者をいいます。
イ 期間の定めのない労働契約を締結している労働者であること。
ロ 派遣労働者として雇用されている者でないこと。
ハ 同一の事業主に雇用される通常の労働者と比べ勤務地または職務が限定されていないこと。
ニ 所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者の所定労働時間と同じ労働者であること(就業規則または労働協約に規定する通常の労働者の所定労働時間が明確ではない場合、他の通常の労働者と比べて所定労働時間が同等であること)。
ホ 同一の事業主に雇用される通常の労働者に適用される就業規則等に、長期雇用を前提として賞与または退職金制度の実施および昇給の実施が規定され、当該規定が適用されている労働者であること(正規雇用労働者としての試用期間中の者は、正規雇用労働者から除く。)。(正社員化コースに限。))

[山上コメント] 転換等の時期(令和4年10月1日)によって支給要件が異なります。詳細は第5 令和4年度改正点を参照してください。

短時間正社員 イ 期間の定めのない労働契約を締結している労働者であること。
ロ 派遣労働者として雇用されている者でないこと。
ハ 所定労働時間が同一の事業主に雇用される正規雇用労働者の所定労働時間に比べ短い労働者であること。
ニ 同一の事業主に雇用される正規雇用労働者の労働条件が適用されている労働者であって、時間当たりの基本給、賞与、退職金等の労働条件が、同一の事業主に雇用される正規雇用労働者と比較して同等である労働者であること。

[山上コメント] 短時間正社員への転換でも同額の57万円ですが、所定労働時間が正規雇用労働者の所定労働時間に比べ短いという概念から、1日でも正規の8時間を超えてしまうと不支給となる場合があります。残業無しのみが対象と考えてください。

就業規則 常時10人以上の労働者を使用する事業場にあっては、管轄する労働基準監督署に届け出た就業規則(労働基準監督署の受理印があるもの)をいいます。
常時10人未満の労働者を使用する事業場にあっては、労働基準監督署等に届け出た就業規則または就業規則の実施について事業主の氏名等の記載と労働組合等の労働者代表者(有期雇用労働者等を含むその事業所全ての労働者の代表者)の氏名等を記載した申立書が添付されている就業規則をいいます。

[山上コメント] キャリアアップ助成金では、正社員転換規定等が「就業規則」に定められている必要があります。
この「就業規則」とは、常時10人以上の労働者を使用する事業場にあっては、管轄する労働基準監督署に届け出た就業規則(労働基準監督署の受理印があるもの)となります。
常時10人以上の会社では、就業規則があっても、労基署の届出をしていないと就業規則と認められず不支給となります。

労働協約 労働組合と使用者が、労働条件等労使関係に関する事項について合意したことを文書に作成したものをいいます。

[山上コメント] 労働協約は会社に労働組合が無いと成立しません。

就業規則等 就業規則または労働協約をいいます。

[山上コメント] 就業規則等には、個別雇用契約書は入っていません。例えば、昇給制度が雇用契約書に書いてあっても、就業規則に書いて無ければ、就業規則等に明示したことにはなりません。不支給となる場合があります。

第4 正社員化コースの主な要件

対象となる労働者 (全てに該当すること)

支給対象事業主に、賃金の額または計算方法が正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等の適用を通算(※1)6か月以上受けて雇用される有期雇用労働者 (※2),(※3)
※1. 空白期間が6か月以上ある場合は、当該空白期間前に満了した有期労働契約の契約期間は通算しない。
また、学校教育法に規定する学校、専修学校または各種学校の学生または生徒であって、大学の夜間学部および高等学校の夜間等の定時制の課程の者等以外のもの(以下「昼間学生」という)であった期間は通算しない。
※2. 有期雇用労働者から転換する場合、雇用された期間が通算して3年以内の者に限る。有期雇用労働者から正規雇用労働者に転換される場合、当該転換日の前日から過去3年以内に、当該事業主の事業所において、無期雇用労働者として6か月以上雇用されたことがある者は、転換前の雇用形態を無期雇用労働者とする。
※3. 有期雇用労働者等に適用される雇用区分の就業規則等において契約期間に係る規定がない場合は、転換前の雇用形態を無期雇用労働者とする。
正規雇用労働者として雇用することを約して雇い入れられた有期雇用労働者等でないこと。(正社員求人に応募し正規雇用労働者として雇用することを約して雇い入れられた者ではないこと。
当該転換日または直接雇用日の前日から過去3年以内に、当該事業主の事業所または資本的・経済的・組織的関連性からみて密接な関係の事業主(財務諸表等の用語、様式および作成方法に関する規則に規定する親会社、子会社、関連会社および関係会社等をいう。以下同じ。)において正規雇用労働者として雇用されたことがある者、請負もしくは委任の関係にあった者または取締役、社員、監査役、協同組合等の社団もしくは財団の役員であった者でないこと。
転換または直接雇用を行った適用事業所の事業主又は取締役の3親等以内の親族以外の者であること。親族とは、配偶者、3親等以内の血族及び姻族をいう。
支給申請日において、転換後の雇用区分の状態が継続し、離職していない者であること。
本人の都合による離職および天災その他やむを得ない理由のために事業の継続が困難となったことまたは本人の責めに帰すべき理由による解雇を除く。

[山上コメント] 正社員期間が6か月経過後、支給申請の前に自己都合退職してしまったようなケースです。「自己都合退職は除く。」から支給対象となりますので、自己都合の退職願いを必ずもらっておいてください。

支給申請日において、有期雇用労働者または無期雇用労働者への転換が予定されていない者であること。
転換または直接雇用後の雇用形態に定年制が適用される場合、転換または直接雇用日から定年までの期間が1年以上である者であること。
支給対象事業主または密接な関係の事業主の事業所において定年を迎えた者でないこと。

対象となる事業主 (全てに該当すること)

有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換する制度(※1) を就業規則また労働協約その他これに準ずるものに規定している事業主であること。
※1 面接試験や筆記試験等の適切な手続き、要件(勤続年数、人事評価結果、所属長の推薦等の客観的に確認可能な要件・基準等をいう。以下(においても同じ)および転換または採用時期が明示されているものに限る。ただし、年齢制限の設定や勤続年数の上限設定(例えば、「○歳未満」「勤続○年未満」)などにより転換の対象となる有期雇用労働者等を限定している場合を除く。
上記①の制度の規定に基づき、雇用する有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換した事業主であること。
上記②により転換された労働者を、転換後6か月以上の期間継続して雇用し、当該労働者に対して転換後6か月(※4) 分の賃金(※5) を支給した事業主であること。
※4 勤務 をした日数が11日未満の月は除く
※5 時間外手当等を含む。
多様な正社員への転換の場合にあっては、上記①の制度の規定に基づき転換した日において、対象労働者以外に正規雇用労働者(多様な正社員を除く。)を雇用していた事業主であること。
支給申請日において当該制度を継続して運用している事業主であること。
転換後6か月間の賃金を、転換前6か月間の賃金より3%以上増額させている事業主であること。

賃金とは

基本給および定額で支給されている諸手当(注)を含む賃金の総額。
原則所定労働時間1時間当たりの賃金で比較する。ただし、転換前後において所定労働時間に変更がなく支給形態がいずれも月給であって変形労働時間制でない場合または変形労働時間制であって所定労働時間および支給形態に変更がない場合は6か月間の賃金の総額。
(注)名称の如何を問わず、実費弁償的なものや毎月の状況により変動することが見込まれるものは除く。
転換後の賃金に定額で支給される諸手当を含める場合、当該手当の決定および計算の方法(支給要件を含む)が就業規則または労働協約に記載されているものに限る(転換前において定額で支給される諸手当は、就業規則等への記載の有無にかかわらず転換前6か月間の賃金に含める)。
ただし、固定残業代の総額または時間相当数を減らしている場合であって、かつ転換前後の賃金に固定残業代を含めた場合に、⑥を満たさない場合のみ、「定額で支給されている諸手当」に固定残業代を含む。また、時給制の場合は1時間あたりの、日給制の場合は1日あたりの単価が定められている手当については、「毎月の状況により変動することが見込まれるため、実態として労働者の処遇が改善しているか判断できないもの」には該当しない。以下、正社員化コースにおいて同じ。

当該転換日の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に、当該転換を行った適用事業所において、雇用保険被保険者を解雇等事業主の都合により離職させた事業主以外の者であること。
転換日が令和4年10月1日の場合、その前日は令和4年9月30日になり、6か月前の日は令和4年4月1日になる。解雇等の制限期間は、令和4年4月1日から令和5年3月31日の間となる。
当該転換日の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に、当該転換を行った適用事業所において、特定受給資格離職者の数を、当該事業所における当該転換を行った日における雇用保険被保険者数で除した割合が6%を超えている(3人以下の場合を除く)事業主以外の者であること。
上記①の制度を含め、雇用する労働者を他の雇用形態に転換する制度がある場合にあっては、その対象となる労働者本人の同意に基づく制度として運用している事業主であること。
正規雇用労働者に転換した日以降の期間について、当該労働者を雇用保険被保険者として適用させている事業主であること。

[山上コメント] 転換前の有期雇用労働者であった期間には雇用保険被保険者の要件はないです。

正規雇用労働者に転換した日以降の期間について、当該労働者が社会保険の適用要件を満たす事業所の事業主に雇用されている場合、社会保険の被保険者として適用させている、または社会保険の適用要件を満たさない事業所の事業主(任意適用事業所の事業主、個人事業主)が正規雇用労働者に転換させた場合、社会保険の適用要件を満たす労働条件で雇用している事業主であること。

第5 令和4年度改正点

令和4年4月1日からの正社員化コースの改正

令和4年10月1日からの正社員化コースの改正

令和4年10月1日以降に転換または直接雇用を実施する場合は、支給要件が変更となります。

正規雇用労働者定義の変更

9/30まで 同一の事業所内の正規雇用労働者に適用される就業規則が適用されている労働者
※正社員待遇が適用されていない正規雇用労働者としての試用期間中の者は、正規雇用労働者から除く
10/1以降 同一の事業所内の正規雇用労働者に適用される就業規則が適用されている労働者
ただし、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている者に限る
※正規雇用労働者としての試用期間中の者は、正規雇用労働者から除く

「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」のある正規雇用労働者への転換が必要となります。

※賞与:「賞与は原則として支給する。ただし、業績によっては支給しないことがある。」との記載だけをもって不支給となることはありませんが、「賞与は支給しない。ただし、業績によっては支給することがある。」といったように、原則不支給の規定の場合や、「賞与の支給は会社業績による」といったように、原則として賞与を支給することが明瞭でない場合は、支給対象外となります。

※昇給:賃金改定の規定(年1回賃金を見直す等)や降給の可能性のある規定であっても、就業規則等に客観的な昇給基準等の規定がある場合には、当該規定の運用により、賃金据え置きや降給の可能性があったとしても、支給対象となり得ます。

支給不可のケース

:客観的な昇給基準等ではなく、賃金据え置きや降給の規定がある場合
(例)会社が必要と判断した場合には、会社は、賃金の昇降給その他の改定を行う。

支給可のケース

:客観的な昇給基準に基づき、賃金据え置きの規定をおいている場合
(例)昇給は勤務成績その他が良好な労働者について、毎年○月○日をもって行うものとする。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は行わないことがある。
(例)毎年1回、各等級の役割遂行度を評価し、基本給の増額又は減額改定を行う。

正規雇用労働者として試用期間中の者について、令和4年9月30日までの転換等の場合は、「正社員待遇が適用されていない(試用期間中は賃金が低いなど)正社員としての試用期間中の者」に限り、正社員とは見做さないこととしていますが、令和4年10月1日以降に転換等する場合は、当該試用期間中の正社員待遇の適用の有無に関わらず、正規雇用労働者に転換等したものとは見做しません。

「正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等」が適用されている非正規雇用労働者の正社員転換が必要となります。

対象となる労働者要件の変更

9/30まで 雇用される期間が通算して6か月以上の有期雇用労働者または無期雇用労
働者として雇用される期間が6か月以上の無期雇用労働者
10/1以降 賃金の額または計算方法が「正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を6か月以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者
例)契約社員と正規雇用労働者とで異なる賃金規定基本給の多寡や昇給幅の違いなどが適用されるケース

基本給、賞与、退職金、各種手当等については、いずれか一つ以上で正規雇用労働者と異なる制度を明示的に定めていれば(基本給の多寡や賞与の有無等)支給対象となり得ます。

※就業規則等における「適用範囲」等の条文において、「契約社員及びパート労働者の就業に関する事項については別に定める」と、非正規雇用労働者を別規定にしている場合や、正規雇用労働者・非正規雇用労働者で 就業規則が一体となっていたとしても「雇用形態」等の条文において、「正規雇用労働者」「契約社員」「パート」が区別して規定されている場合は「正規」「非正規」で区別されているものと見做します。
ただし、就業規則等において「個別の雇用契約書で定める」と記載している場合は、就業規則等において正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の賃金の額または計算方法の違いが確認できず支給対象外となります。

適用される雇用区分の就業規則等において契約期間に係る規定がない場合は、転換前の雇用形態を無期雇用労働者として取り扱います。

第6 正社員化コースにおける令和4年度以降の変更点について

正社員定義の変更について

Q-1 「『賞与または退職金の制度』かつ『昇給』のある正社員への転換が必要」とありますが、具体的にどのように変わるのか教えてください。

A-1 従前制度の正社員に適用されるべき労働条件「長期雇用を前提とした待遇が正社員に適用されていること」を要件化したものです。具体的には、就業規則又は労働協約(以下「就業規則等」)に基づき、以下のいずれも適用されていることを要件として追加します。
・賞与または退職金の制度のどちらか
・昇給

Q-2 賞与、退職金及び昇給について、就業規則等にどのように規定すればよいですか。

A-2 「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が正社員に適用されることが明示的に分かるように就業規則等へ規定している必要があります。
また、できる限り具体的に(※)規定していただくことが望ましいです。

賞与や昇給であれば、その支給又は実施時期等を明示することが望ましい。退職金であれば、労働基準法上、適用される労働者の範囲、退職金の支給要件、額の計算及び支払の方法、支払の時期などを記載しなければならないとされている。

Q-3 正社員 転換後6か月の間に、賞与や昇給の実績がないのですが、支給対象になりますか。

A-3 正社員に適用される就業規則等に「賞与または退職金制度」かつ「昇給」の規定を確認することができれば、支給対象となり得ます。ただし、就業規則等に沿った運用がなされていない場合(例:6月に賞与支給のはずが、当該月に支給されていないなど)、必要に応じて合理的な説明を求める場合があります。

Q-4 コロナ禍で経営状況の見通しが立ちません。賞与について「賞与は原則として支給する。ただし、業績によっては支給しないことがる。」と規定している場合は、支給対象となりますか。

A-4 就業規則等で賞与制度の規定がある場合に、「賞与は原則として支給する。ただし、業績によっては支給しないことがある。」との記載だけをもって不支給となることはありません。ただし、「賞与は支給しない。ただし、業績によっては支給することがある。」といったように、原則不支給の規定の場合や、「賞与の支給は会社業績による」といったように、原則として賞与を支給することが明瞭でない場合は、支給対象外となります。

Q-5 多様な正社員にも「賞与または退職金制度」かつ「昇給」が適用されていることが必要ですか。

A-5 多様な正社員(勤務地限定・職務限定・短時間正社員)も正社員と同様、「賞与または退職金制度」かつ「昇給」が適用されていることが必要です。

Q-6 昇給について。賃金改定の規定(年1回賃金を見直す等)や降給の可能性のある規定は、「昇給のある就業規則」が適用されている正社員として見做すことはできますか。

A-6 就業規則等に客観的な昇給基準等の規定がある場合には、当該規定の運用により、賃金据え置きや降給の可能性があったとしても、支給対象となり得ます。
※客観的な昇給基準等なく、賃金据え置きや降給の規定がある場合(支給不可のケース
(例)会社が必要と判断した場合には、会社は、賃金の昇降給その他の改定を行う。
※ 客観的な昇給基準に基づき、賃金据え置きの規定をおいている場合(支給可のケース)
(例)昇給は勤務成績その他が良好な労働者について、毎年〇月〇日をもって行うものとする。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は行わないことがある。
(例)毎年1回、各等級の役割遂行度を評価し、基本給の増額又は減額改定を行う。

[山上コメント] 賞与について
助成金上は下記のような、年2回、会社の業績状況等要件、延期あり、支給しないあり、正社員限定で作成してください。
正社員賃金規定(賞与)
第15条 会社は、会社の業績、従業員各人の査定結果、会社への貢献度等を考慮して、原則として年2回、8月と12月の会社が定める日に賞与を支給する。ただし、会社の業績状況等により支給時期を延期し、又は支給しないことがある。
2 賞与は、支給日当日に会社に正社員として在籍し、かつ通常に勤務していた者について支払うものとする。

[山上コメント] 昇給について
助成金上は下記のような、降給、減額改定なしの年1回、月明示の改定が無難です。
正社員賃金規定(賃金の昇給)
第14条 基本給及び諸手当等の賃金の昇給については、原則として毎年1回、4月に改定する。改定額については、会社の業績及び従業員の勤務成績等を勘案して各人ごとに決定する。
2 前項のほか、特別に必要があるときは、臨時に賃金の改定を行うことがある。

非正規雇用労働者定義の変更について

Q-7 「賃金の額または計算方法が正社員と異なる就業規則」について、具体的に教えてください。

A-7 基本給、賞与、退職金、各種手当等については、いずれか一つ以上で正規雇用労働者と異なる制度を明示的に定めていれば(基本給の多寡や賞与の有無等)支給対象となり得ます。
なお、有期雇用労働者を正規雇用労働者(多様な正社員を含む)に転換する場合は、就業規則等上に「契約期間の定め(※)」が必要です。当該定めがない場合は、雇用契約書上有期雇用労働者であっても、無期雇用労働者と見做します
(有期→正規の申請であっても、無期→正規として支給決定)。
※「契約期間の定め」の例
(就業規則上契約期間が定められているケース)
契約社員の雇用契約期間は1年とする。→〇

[山上コメント] 賞与の不支給
基本給、賞与、退職金、各種手当等のいずれか一つ以上で正規雇用労働者と異なる制度を明示的に定めていれば賞与の有無等を支給対象となり得ます。
期間契約社員賃金規定で「賞与は支給しない」となっていれば、支給対象となります。
期間契約社員賃金規定(賞与の不支給)
第27条 期間契約社員に対しては、原則として賞与は支給しない。

[山上コメント] 契約期間の定め
期間契約社員就業規則の中で、「期間契約社員の雇用契約期間は原則として3か月以上1年以内とする。」等の規定が必要です。
(注意)契約期間が6か月の会社が、厚労省の例示通りの「契約社員の雇用契約期間は1年とする。」という規定を作ると、契約期間の定めがないとみなされる場合があります。

期間契約社員就業規則(期間契約社員の定義、雇用契約期間)
2 期間契約社員については、雇用契約期間は、原則として3か月以上1年以内とする。

Q-8 正社員と非正規社員の別が就業規則で明らかになっていません。この場合は支給対象になりますか。

A-8 正社員と非正規雇用労働者の別が明らかになっていない場合は、「賃金の額または計算方法が正社員と異なる就業規則」であることを確認することができないため、支給対象外となります。
例えば、「適用範囲」等の条文において、「契約社員及びパート労働者の就業に関する事項については別に定める」と、非正規を別規定にしている場合や、正規・非正規で就業規則が一体となっていたとしても「雇用形態」等の条文において、「正社員」「契約社員」「パート」が区別して規定されている場合は、「正規」「非正規」で区別されているものと見做します。

Q-9 就業規則には「個別の雇用契約書で定める」と記載し、各従業員と賃金の額または計算方法が正社員と異なる雇用区分の雇用契約を締結している場合も支給対象になりますか。

A-9 就業規則等において、正社員と非正規雇用労働者の間の賃金の額または計算方法の違いを確認することができない場合は支給対象外となります。

Q-10 令和4年6月1日に就業規則を改正し、「賃金の額または計算方法が正社員と異なる雇用区分」の契約社員就業規則を作成しました。令和4年3月1日雇い入れた契約社員を令和4年10月1日に正社員転換しました、支給対象になりますか。

A-10 「賃金の額または計算方法が正社員と異なる雇用区分の就業規則」の適用を6か月以上受けて雇用してないため、支給対象外となります。

[山上コメント]
令和4年6月1日から6か月経過後で令和4年12月1日以降の正社員転換とすべきというのが厚生労働省の見解です。

Q-11 派遣労働者の直接雇用の場合及び有期実習型訓練修了者も「賃金の額または計算方法が正社員と異なる就業規則」が適用されていることが必要ですか。

A-11 必要ありません。

その他について

Q-12 正社員転換後に一定期間試用期間を設けています。支給対象になりますか。

A-12 令和4年9月30日までの転換等の場合は、「正社員待遇が適用されていない(試用期間中は賃金が低いなど)正社員としての試用期間中の者」に限り、正社員とは見做さないこととしています。
しかし、令和4年10月1日以降に転換等を実施する場合は、正社員待遇の適用の有無に関わらず、正社員転換後に試用期間中を設けている場合は、当該期間は正社員と見做しません。

[山上コメント]
通常の会社では、下記の厚生労働省_モデル就業規則のように試用期間の規定はよく入っています。これで不支給になったりすることは避けたいところです。第5項の改定案をご確認ください。
厚生労働省_モデル就業規則(試用期間)
第6条 労働者として新たに採用した者については、採用した日から6か月間を試用期間とする。
2 前項について、会社が特に認めたときは、試用期間を短縮し、又は設けないことがある。
3 試用期間中に労働者として不適格と認めた者は、解雇することがある。ただし、入社後14日を経過した者については、第51条第2項に定める手続によって行う。
4 試用期間は、勤続年数に通算する。

改定案
5 有期契約社員からの正社員転換においては、試用期間制度は適用しない。と追加しておくとよいです。

第7 正社員化コースの申請資料まとめ

キャリアアップ助成金(厚生労働省のサイト)

ダウンロード案内

  1. 「キャリアアップ助成金Q&A(令和5年度)」(令和5年4月12日更新)
  2. 「キャリアアップ助成金のご案内(パンフレット)」(令和5年4月10日更新)
  3. 「(正社員化支援)キャリアアップ助成金のご案内(パンフレット)」(令和5年4月13日)
  4. 「キャリアアップ助成金のご案内(概要)」(令和5年3月31日)
  5. 申請様式ダウンロード
    令和5年度申請様式(令和5年4月1日以降の取組に係る様式)
    雇用関係助成金に係る共通の要件等に関する申請様式
  6. 東京労働局 キャリアアップ助成金 必要書類チェックリスト


以上