キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金(正社員化コース)以下、「キャリアアップ助成金」の概要、令和7年改正、要件などをQ&Aで徹底解説
CONTENTS
- Q1.そもそもキャリアアップ助成金とは、どんな制度ですか?
- Q2.キャリアアップ助成金の令和7年度改正の内容とはどんなことですか?
- Q3.キャリアアップ助成金の正社員転換の流れを教えてください。
- Q4.キャリアアップ助成金の用語の定義を教えてください。
- Q5.対象となる労働者の要件は何ですか?
- Q6.正規雇用労働者の定義とは何ですか?
- Q7.対象となる労働者要件とは何ですか?
- Q8.対象となる事業主の要件とは何ですか?
- Q9.キャリアアップ助成金上の就業規則の問題点を教えてください?
- Q10.キャリアアップ助成金の正社員転換規程の例を教えてください。
- Q11.キャリアアップ助成金の3%アップ要件で、算定に含めることができない手当例を教えてください。
- Q12. キャリアアップ助成金の正社員転換規程の例を教えてください。
- Q13.参考になるサイトを教えてください。
Q1.そもそもキャリアアップ助成金とは、どんな制度ですか?
A1. キャリアアップ助成金(正社員化コース)とは、就業規則等に基づき、6か月以上雇用した有期雇用労働者等について、賃金を3%以上アップして正社員化した場合に助成しています。厚生労働省管轄の助成金です。
キャリアアップ助成金のご案内
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html
Q2.キャリアアップ助成金の令和7年度改正の内容とはどんなことですか?
A2. キャリアアップ助成金の令和7年度(改正)は、下記の通りです。
【山上コメント】
令和7年度の改正で、通常の雇入れから6か月以上3年未満の有期雇用労働者については、80万円(40万円×2期)から40万円の1期のみとなりました。
1 支給額 1人当たりの助成額は以下のとおりです。
対象者・企業規模/区分 | 有期雇用労働者 | 無期雇用労働者 | |
---|---|---|---|
重点支援 対象者 |
中小企業 | 80万円 (40万円×2期) |
40万円 (20万円×2期) |
大企業 | 60万円 (30万円×2期) |
30万円 (15万円×2期) |
|
上記以外 | 中小企業 | 40万円 (40万円×1期) |
20万円 (20万円×1期) |
大企業 | 30万円 (30万円×1期) |
15万円 (15万円×1期) |
1年度1事業所当たりの支給申請上限人数20名(同一対象者の2回目の申請を除く)
(1) 重点支援対象者とは、次のa~cのいずれかに該当する者
a:雇入れから3年以上の有期雇用労働者
b:雇入れから3年未満で、次の①②いずれにも該当する有期雇用労働者
①過去5年間に正規雇用労働者であった期間が合計1年以下
②過去1年間に正規雇用労働者として雇用されていない
c:派遣労働者(注1)、母子家庭の母等または父子家庭の父、人材開発支援助成金の特定の訓練修了者(注2)
(注1)派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用する場合
(注2)人材開発支援助成金の特定の訓練修了者
※ 雇用された期間が通算5年を超える有期雇用労働者については無期雇用労働者とみなします。
※ 新規学卒者で雇い入れから一定期間経過していない者については支給対象外とします。
2 加算額 1事業所当たりの加算額は以下のとおりです。※1事業所当たり1回のみ
措置内容 | 加算額 |
---|---|
① 正社員転換制度を新たに規定し、当該雇用区分に転換等した場合(1事業所当たり1回のみ) | 20万円 (大企業15万円) |
② 多様な正社員制度(※)を新たに規定し、当該雇用区分に転換等した場合(1事業所当たり1回のみ) ※ 勤務地限定・職務限定・短時間正社員いずれか1つ以上の制度 |
40万円 (大企業30万円) |
3 新規学卒者の取扱いについて
【山上コメント】
令和7年度の改正で、新規学卒者は雇い入れた日から1年間は支給対象外となります。
1年間経過後は正社員転換が可能ですが、申立書等が必要です。
【新規学卒者とは】
新規学卒者とは、学校、専修学校、職業能力開発促進法第15条の7第1項各号に掲げる施設又は職業能力開発総合大学校を新たに卒業しようとする者及び卒業年度の3月31日までに内定を得た者をいいます。令和7年4月1日に雇用された新規学卒者については、令和8年3月31日まで支給対象外です。
※例えば、3月15日に卒業式を迎えたが就職先が決まっておらず4月2日以降に就職先が決まり、5月に就職したという者については、支給対象となり得ます。
【申立書の提出等】
・新規学卒者で、申請事業主に雇い入れられた日から起算して1年を経過する者が対象労働者に含まれる場合には、応募書類等や本人署名入りの申立書等の提出が必要となります。
※申立書等の記載内容として、対象労働者の最終学歴の卒業年月日、申請企業に入社するまでに他の企業で働いていたことがないことを記載してください。
※申立書の場合は、対象労働者本人の署名が必要です(申立書は労使双方の合意に基づいたものであることが望ましく、事業主の皆様においてもご確認ください)。
4 キャリアアップ計画書の認定の廃止(提出は必要)
キャリアアップ計画書の認定が無くなりました。
【山上コメント】
令和7年度の改正で、キャリアアップ計画書の認定が無くなりましたが、記載内容は変わらず、事前に労働局に提出の必要があります。
キャリアアップ助成金Q&A(令和7年度版)4ページ上から1行目
https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001469678.pdf
キャリアアップ計画書について
Q-2.キャリアアップ計画書が認定制から届出制になったときの取扱いに変更などはありますか。
A-2. キャリアアップ計画書については、事前に都道府県労働局長の認定を受ける必要がなくなりましたが、記載内容や、事前に労働局に提出が必要であるといった点については、変更はありません。
記載内容に不備等がある場合には、提出された労働局から修正等を依頼する場合があります。
なお、計画が認定制から届出制に変わりますが、引き続き、従業員の方のキャリアアップを見据えた計画を作成いただき、それに基づき着実な取組を実施いただくようお願いします。
Q-3.令和7年4月1日より前にキャリアアップ計画書を提出し、認定を受けている場合、再度キャリアアップ計画書を提出する必要がありますか。
A-3. 令和7年4月1日より前にキャリアアップ計画書の認定を受けている場合は、改めてキャリアアップ計画書を提出する必要はありません。令和7年4月1日より前に認定を受けたキャリアアップ計画書に基づいて、取組を行っていただくようお願いします。なお、キャリアアップ計画書に記載した取組内容に変更が生じた場合は、従前どおり、変更届を提出してください。
Q3.キャリアアップ助成金の正社員転換の流れを教えてください。
A3.その1. 初めて加算20万円ありの場合
キャリアアップ計画の提出後で、転換規程を追加します。
※令和7年度の改正で、通常の雇入れから6か月以上3年未満の有期雇用労働者については、80万円(40万円×2期)から40万円の1期のみとなりました。
A3.その2. 初めて加算20万円なしの場合
※令和7年度の改正で、通常の雇入れから6か月以上3年未満の有期雇用労働者については、80万円(40万円×2期)から40万円の1期のみとなりました。
Q4.キャリアアップ助成金の用語の定義を教えてください。
A4. キャリアアップ助成金の用語の定義については下記の通りです。
№ | 用語 | 用語の定義(内容) |
---|---|---|
1 | キャリアアップ計画 | 企業ごとに雇用管理のあり方が様々であることを踏まえ、社内の人材確保等の現状を分析した上で、有期雇用労働者等のキャリアアップを図る上での課題について有期雇用労働者等の意見も踏まえつつ、社内で検討を行い、その対応方針案を踏まえ作成する計画を「キャリアアップ計画」といいます。 |
2 | キャリアアップ管理者 | 各事業所での有期雇用労働者等のキャリアアップを図る取組が積極的に進むよう、事業所ごとに、有期雇用労働者等のキャリアアップに取り組む者として、必要な知識及び経験を有していると認められる者を「キャリアアップ管理者」といいます。 |
3 | 有期雇用労働者 | 期間の定めのある労働契約を締結する労働者(短時間労働者および派遣労働者のうち、期間の定めのある労働契約を締結する労働者を含む)をいいます。 |
4 | 短時間労働者 | 「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(平成5年法律第76号)第2条第1項に規定する短時間労働者をいいます。 |
5 | 派遣労働者 | 「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(昭和60年法律第88号)第2条に規定する派遣労働者をいいます。 |
6 | 無期雇用労働者 | 期間の定めのない労働契約を締結する労働者(短時間労働者および派遣労働者のうち、期間の定めのない労働契約を締結する労働者を含む)のうち、通常の労働者(正規雇用労働者、勤務地限定正社員、職務限定正社員および短時間正社員)以外の者(通常の労働者に適用される労働条件が適用されていないことが確認できる者)をいいます。 |
7 | 正規雇用労働者 | 次のイからホまでのすべてに該当する労働者をいいます。 イ 期間の定めのない労働契約を締結している労働者であること。 ロ 派遣労働者として雇用されている者でないこと。 ハ 同一の事業主に雇用される通常の労働者と比べ勤務地または職務が限定されていないこと。 ニ 所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者の所定労働時間と同じ労働者であること(就業規則または労働協約に規定する通常の労働者の所定労働時間が明確ではない場合、他の通常の労働者と比べて所定労働時間が同等であること)。 ホ 同一の事業主に雇用される通常の労働者に適用される就業規則等に、長期雇用を前提として賞与又は退職金制度の実施及び昇給の実施が規定され、当該規則が適用されている労働者であること。但し、正社員化コースにおいて、正規雇用労働者としての試用期間の適用を受けていた者については、原則として、試用期間中は転換又は直接雇用が完了したものとは見做さず、試用期間終了日の翌日に転換等したものと見做す。 |
8 | 賞与 | 一般的に労働者の勤務成績に応じて定期または臨時に支給される手当(いわゆるボーナス)をいいます。 |
9 | 退職金 | 事業所を退職する労働者に対して、在職年数等に応じて支給される退職金(年金払いによるものを含む)を積み立てるための制度であって、積立金や掛金等(以下「積立金等」という)の費用を全額事業主が負担することが就業規則または労働協約に規定されており、実際に積立金等の費用を全額事業主が負担するもの(事業主が拠出する掛金に上乗せして従業員が掛金を拠出する場合を含む)をいいます。 |
10 | 勤務地限定正社員 |
次のイからホまでのすべてに該当する労働者をいいます。 イ 期間の定めのない労働契約を締結していること。 ロ 派遣労働者として雇用されていないこと。 ハ 所定労働時間が正規雇用労働者と同等であること。 ニ 勤務地が限定されていること(例:特定の事業所、通勤可能な範囲、市区町村や都道府県など) ホ 正規雇用労働者の労働条件が適用されていること。 |
11 | 職務限定正社員 |
次のイからホまでのすべてに該当する労働者をいいます。 イ 期間の定めのない労働契約を締結していること。 ロ 派遣労働者として雇用されていないこと。 ハ 所定労働時間が正規雇用労働者と同等であること。 ニ 職務が限定されていること。 ホ 正規雇用労働者の労働条件が適用されていること。 |
12 | 短時間正社員 |
次のイからニまでのすべてに該当する労働者をいいます。 イ 期間の定めのない労働契約を締結していること。 ロ 派遣労働者として雇用されていないこと。 ハ 所定労働時間が正規雇用労働者より短いこと。 ニ 労働条件(時間当たりの基本給、賞与、退職金等)が正規雇用労働者と同等であること。 |
13 | 多様な正社員 | 勤務地限定正社員、職務限定正社員および短時間正社員をいいます。 |
14 | 有期雇用労働者等 | 有期雇用労働者および無期雇用労働者をいいます。 |
15 | 母子家庭の母等 | 「母子及び父子並びに寡婦福祉法」に規定する配偶者のない女子であって、20歳未満の子または一定の障害がある子等を扶養しているものをいいます。 |
16 | 父子家庭の父 | 「児童扶養手当法」に基づく児童扶養手当を受けている父親をいいます。 |
17 | 所定労働時間 |
原則として以下のように定義されます。 ① 就業規則等に基づく通常週の労働時間(祝祭日や特別休日を除く) ② 月単位の労働時間が定められている場合、これに52分の12を乗じた時間 ③ 明確に定まっていない場合は、勤務実績に基づく平均所定労働時間 |
18 | 就業規則 | 常時10人以上の労働者を使用する場合には、労働基準監督署に届け出たもの。10人未満の場合は、労働者代表の署名がある就業規則等をいいます。 |
19 | 労働協約 | 労働組合と使用者が労働条件等について合意し文書化したものをいいます。 |
20 | 就業規則等 | 就業規則または労働協約をいいます。 |
Q5.対象となる労働者の要件は何ですか?
A5. 対象となる労働者の要件は、次の1~9のすべてに該当する労働者が対象です。
№ | 対象となる労働者の要件 |
---|---|
1 |
有期雇用労働者または無期雇用労働者(※1) (次のアからウまでのいずれかに該当する労働者) ア 支給対象事業主に、賃金の額または計算方法が正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等の適用を通算(※2) 6か月以上受けて雇用される有期雇用労働者(※3),(※4) または無期雇用労働者 イ 6か月以上の期間継続して派遣先の事業所その他派遣就業場所ごとの同一の組織単位における業務に従事している有期派遣労働者または無期派遣労働者 (※5) ウ 支給対象事業主が実施した有期実習型訓練(人材開発支援助成金(人材育成支援コース)によるものに限る。)を受講し、修了した有期雇用労働者等(※6) であって、支給対象事業主に、賃金の額又は計算方法が正規雇用労働者等と異なる雇用区分の就業規則等の適用を通算6か月以上(転換日までの雇用期間が通算6か月に満たない場合は、雇い入れから転換日までの適用を)受けて雇用される者 |
2 |
正規雇用労働者として雇用することを約して雇い入れられた有期雇用労働者等でないこと。 (正社員求人に応募し正規雇用労働者として雇用することを約して雇い入れられた者ではないこと。) (正社員求人に応募し、試用期間として有期契約を結んだ者にはその理由を確認する場合があります。) |
3 |
正社員化の前日から過去3年以内に、当該事業主の事業所または資本的・経済的・組織的関連性からみて密接な関係の事業主(※7) において正規雇用労働者として雇用されたことがある者、請負もしくは委任の関係にあった者または取締役、社員(※8) 、監査役、協同組合等の社団もしくは財団の 役員で あった者でないこと。 |
4 | 正社員化を行った適用事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族(※9) 以外の者であること。 |
5 | 支給申請日において、正社員化後の雇用区分の状態が継続し、離職(※10) していない者であること。 |
6 | 支給申請日において、有期雇用労働者または無期雇用労働者への転換が予定されていない者であること。 |
7 | 正社員化後の雇用形態に定年制が適用される場合、正社員化日から定年までの期間が1年以上である者であること。 |
8 | 支給対象事業主または密接な関係の事業主の事業所において定年を迎えた者でないこと。 |
9 | 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則に規定する就労継続支援A型の事業所における利用者以外の者であること。 |
※1 | 対象労働者が新規学卒者に該当し、申請事業主に雇い入れられた日から起算して1年を経過していない者については支給対象外。 |
※2 | 支給対象事業主との間で締結された一の有期労働契約の契約期間が満了した日と次の有期労働契約の初日との間に、これらの契約期間のいずれにも含まれない空白期間が6か月以上ある場合は、当該空白期間前に満了した有期労働契約の契約期間は通算しない。また、学校教育法に規定する学校、専修学校または各種学校の学生または生徒であって、大学の夜間学部および高等学校の夜間等の定時制の課程の者等以外のもの(以下「昼間学生」という)であった期間は通算しない。以下同じ。 |
※3 |
雇用された期間が通算して5年を超える有期雇用労働者、当該転換日の前日から過去3年以内に、当該事業主の事業所において、無期雇用労働者として6か月以上雇用されたことがある有期雇用労働者、特定の助成金(※)の支給対象となった有期雇用労働者は、転換前の雇用形態を無期雇用労働者とする。 ※ 中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)、特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コースを除く。)、地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース、沖縄若年者雇用促進コース)、人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース) |
※4 | 有期雇用労働者等に適用される雇用区分の就業規則等において契約期間に係る規定がない場合は、転換前の雇用形態を無期雇用労働者とする。 |
※5 | 昼間学生であった期間を除く。雇用された期間(派遣元事業主に有期雇用労働者として雇用された期間)が5年を超える有期派遣労働者は直接雇用前の雇用形態を無期派遣労働者とする。同一の派遣労働者が6か月以上の期間同一の組織単位における業務に従事している場合に限る。 |
※6 | 雇用された期間が通算して5年を超える有期雇用労働者は、転換前の雇用形態を無期雇用労働者とする。 |
※7 | 財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則に規定する親会社、子会社、関連会社および関係会社等をいう。以下同じ。 |
※8 | 社員とは、合名会社、合資会社または合同会社の社員を指し、いわゆる従業員という意味ではない。 |
※9 | 民法(明治29年法律第89号)第725条第1号に規定する血族のうち3親等以内の者、同条第2号に規定する配偶者および同条第3号に規定する姻族をいう。 |
※10 | 本人の都合による離職および天災その他やむを得ない理由のために事業の継続が困難となったことまたは本人の責めに帰すべき理由による解雇を除く。 |
Q6.正規雇用労働者の定義とは何ですか?
A6. 正規雇用労働者の定義とは、下記のようなことです。
同一の事業所内の正規雇用労働者に適用される就業規則が適用されている労働者。
ただし、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が転換時点で適用されている者に限る。
※正社員化時に試用期間ありとして雇用契約書の交付を受けた者は、試用期間中は正社員化が完了したのとはみなさず、賃金上昇要件や支給申請期間等において、試用期間終了日の翌日に正社員化が完了したものと読み替える(ただし、以下の対象労働者要件においては、事業所における正社員化日を基準として、賃金の額又は計算方法が正規雇用労働者と異なる就業規則等の適用を受けていたことを確認する。)。
※支給対象期間中に実施が予定されている「賞与」「昇給」等が適用されていない場合、正規雇用労働者の要件を満たさず、支給対象とならない場合があります。
・「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」のある正規雇用労働者への転換が必要となります。
賞与:原則として不支給の場合や、賞与を支給することが明瞭でない場合は、支給対象外となります。
なお、「賞与は原則として支給する。ただし、業績によっては支給しないことがある。」との記載だけをもって不支給となることはありません(補完的に支給実態等を確認することがあります。)。
(対象外となる例)
「賞与は支給しない。ただし、業績によっては支給することがある。」「賞与の支給は、会社業績による。」(※いわゆる決算賞与は対象外)
※昇給:就業規則等に客観的な昇給基準等の規定がある場合には、賃金改定の規定(年1回賃金を見直す等)や降給の可能性のある規定であっても、支給対象となり得ます。
(対象外となる例)
客観的な昇給基準等ではなく、賃金据え置きや降給の規定がある場合
- 「会社が必要と判断した場合には、会社は、賃金の昇降給その他の改定を行う。」(対象となり得る例)客観的な昇給基準に基づき、賃金据え置きの規定をおいている場合
- 「昇給は勤務成績その他が良好な労働者について、毎年○月○日をもって行うものとする。ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は行わないことがある。」
- 「毎年1回、各等級の役割遂行度を評価し、基本給の増額又は減額改定を行う。」
※賞与、昇給、退職金:社会通念上、正規雇用労働者の待遇として相当な制度である必要があります。
【山上コメント】
賞与は、年2回の場合、1回6万円以上
昇給は、特に目安は厚労省では出していませんが、年3%以上が安全
退職金は、月積立額として、1か月5,000円以上
・試用期間は、転換前のキャリアアップの取組の際に、適正の見極めや訓練等を実施することができますので、正社員化後に設けることの無いようご留意ください(無期→正規とみなします)。
Q7. 対象となる労働者要件とは何ですか?
A7. 対象となる労働者要件とは下記のようなことです。
賃金の額または計算方法が「正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を6か月以上受けて雇用される有期または無期雇用労働者
(例)契約社員と正規雇用労働者とで異なる賃金規定(基本給の多寡や昇給幅の違い)などが適用されるケース
・「正規雇用労働者と異なる雇用区分の就業規則等」が適用されている非正規雇用労働者の正社員転換が必要となります。(実態に差があったとしても規定の差が無い場合は対象となりません)
※基本給、賞与、退職金、各種手当等について、いずれか一つ以上で正規雇用労働者と異なる制度を明示的に定めていれば支給対象となり得ます(通勤手当を除く。)。
(対象となり得る例)
- 就業規則等における「適用範囲」の定めにおいて、「契約社員及びパート労働者の就業に関する事項については別に定める」と、非正規雇用労働者の賃金待遇を別規定とし、別規定上で差が確認できる場合
- 正規雇用労働者・非正規雇用労働者で就業規則が一体となっていたとしても「雇用形態」等の条文において、「正規雇用労働者」「契約社員」「パート」が区別して規定されており、差が確認できる場合
(対象外となる例)
- 就業規則等において「個別の雇用契約書で定める」と記載している場合(就業規則等において正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の賃金の額または計算方法の違いが確認できず、要件を満たさない。)
※「適用を6か月以上受けて」:就業規則等の規定に差があったとしても、適用の実態として転換前後で対象労働者の賃金条件に一切の差が生じていないような場合は、当該規定の適用を受けていた確認ができず、支給対象とはなりません。
・適用される雇用区分の就業規則等において契約期間の定めに係る規定がない場合は、転換前の雇用形態を無期雇用労働者として取り扱います。
Q8.対象となる事業主の要件とは何ですか?
A8. 有期雇用労働者または無期雇用労働者を正社員化する場合、次の1~13のすべてに該当する事業主が対象です。
№ | 対象となる事業主の要件 |
---|---|
1 | 有期雇用労働者等を正規雇用労働者に転換する制度(※1) を就業規則または労働協約その他これに準ずるもの(※2) に規定している事業主(※3) であること。 |
2 | 上記1 の制度の規定に基づき、雇用する有期雇用労働者等を正社員化した事業主であること。 |
3 |
上記2 により正社員化された労働者を、正社員化後6か月以上の期間継続して雇用し、当該労働者に対して正社員化後6か月(※4) 分の賃金(※5) を支給した事業主であること。 第2期支給申請の場合は、正社員化後、12か月以上継続雇用し、正社員化後12か月(※4) 分の賃金(※5) を支給した事業主であること。 |
4 | 多様な正社員への転換の場合にあっては、上記1 の制度の規定に基づき正社員化した日において、対象労働者以外に正規雇用労働者(多様な正社員を除く。)を雇用していた事業主であること。 |
5 |
正社員化後6か月間の賃金を、正社員化前6か月間の賃金より3%以上増額させている事業主であること。 第2期支給申請の場合は、第1期(正社員化後、通常の勤務をした6か月間)の賃金と比較して、第2期(第1期後、通常の勤務をした6か月間)の賃金を、合理的な理由無く引き下げていないこと。 |
<賃金とは> ・基本給および定額で支給されている諸手当(注)を含む賃金の総額。 ・原則、所定労働時間1時間当たりの賃金で比較する。 ただし、正社員化前後において所定労働時間に変更がなく支給形態がいずれも月給である場合は、6か月間の賃金の総額。 ・支給対象事業主が実施した人材開発支援助成金(人材育成支援コース)の有期実習型訓練を受講し、修了した有期雇用労働者等および特定紹介予定派遣労働者であって、正社員化前の期間が6か月未満の場合は正社員化前の雇用期間に応じた賃金。 |
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(注) ・名称の如何を問わず、実費弁償的なものや毎月の状況により変動することが見込まれる等、実態として労働者の処遇が改善しているか判断できない手当は除く。 ・上述の条件に該当しない「定額で支給される諸手当」は、正社員化前6か月間の賃金に含めるが、正社員化後6か月間の賃金に含めるものは、当該手当の決定および計算の方法(支給要件を含む)が就業規則または労働協約に記載されているものに限る。 そのため、本コースを受給するに際しては、原則として労働者に支給する諸手当について、適切に就業規則または労働協約に記載している必要があること。 ・固定残業代の総額または時間相当数を減らしている場合は、正社員化前後の賃金に固定残業代を含めた場合、含めなかった場合のいずれで比較しても、⑤を満たす必要があること。 ・時給制の場合は1時間当たりの、日給制の場合は1日当たりの単価が定められている手当については、「毎月の状況により変動することが見込まれるため、実態として労働者の処遇が改善しているか判断できないもの」には該当しない。 |
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6 | 正社員化した日の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に、当該正社員化を行った適用事業所において、雇用保険被保険者(※6) を解雇(※7) 等事業主の都合により離職させていない事業主であること。 |
7 | 正社員化した日の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に、当該正社員化を行った適用事業所において、雇用保険法第23条第1項に規定する特定受給資格者(以下「特定受給資格者」という)となる離職理由のうち離職区分1Aまたは3Aに区分される離職理由により離職した者(以下「特定受給資格離職者」という)として同法第13条に規定する受給資格の決定が行われたものの数を、当該事業所における当該転換を行った日における雇用保険被保険者数で除した割合が6%を超えていない(※8) 事業主であること。 |
8 | 1 の制度を含め、雇用する労働者を他の雇用形態に転換する制度がある場合にあっては、その対象となる労働者本人の同意に基づく制度として運用している事業主であること。 |
9 | 正社員化した日以降、当該労働者を雇用保険被保険者として適用させている事業主であること。 |
10 | 正社員化した日以降、当該労働者が社会保険の適用要件を満たす事業所の事業主に雇用されている場合、社会保険の被保険者として適用させていること。社会保険の適用要件を満たさない事業所の事業主(任意適用申請をしていない事業所の事業主、個人事業主)が正社員化させた場合、社会保険の適用要件を満たす労働条件で雇用している事業主であること。 |
11 | 母子家庭の母等または父子家庭の父に係る支給額の適用を受ける場合にあっては、正社員化した日において母子家庭の母等または父子家庭の父の有期雇用労働者等を転換した事業主であること。 |
12 | 正規雇用労働者への転換制度を新たに規定した場合の加算の適用を受ける場合、キャリアアップ計画書に記載された同一のキャリアアップ期間中に、正規雇用労働者への転換制度を新たに規定し、当該転換制度により、有期雇用労働者等を当該雇用区分に転換した事業主であること(既に同転換規定が存在し、対象労働者より前に同制度の利用者がいる場合は加算の対象とならないこと)。 |
13 | 勤務地限定、職務限定または短時間正社員制度に係る加算の適用を受ける場合、キャリアアップ計画書に記載された同一のキャリアアップ期間中に、勤務地限定正社員制度、職務限定正社員制度または短時間正社員制度を新たに規定し、有期雇用労働者等を当該雇用区分に転換した事業主であること。 |
※1 | 面接試験や筆記試験等の適切な手続き、要件(勤続年数、人事評価結果、所属長の推薦等の客観的に確認可能な要件・基準等をいう。以下(2)においても同じ)および転換または採用時期が明示されているものに限る。ただし、年齢制限の設定や勤続年数の上限設定(例えば、「○歳未満」「勤続○年未満」)などにより転換の対象となる有期雇用労働者等を限定している場合を除く。 |
※2 | 当該事業所において周知されているものに限る。以下すべてのコースにおいて同じ。 |
※3 | 有期雇用労働者等を多様な正社員に転換する場合は、多様な正社員制度(雇用区分(勤務地限定正社員、職務限定正社員、短時間正社員)および労働条件を就業規則または労働協約に、当該転換制度を就業規則または労働協約その他これに準ずるものに規定したものをいう。)を規定している事業主であること。 |
※4 | 勤務をした日数が11日未満の月は除く。ただし、有給休暇等の労働対価が全額支給された日は出勤日と見なす。 |
※5 | 時間外手当等を含む。以下、特別の定めがある時を除きすべてのコースにおいて同じ。 |
※6 | 雇用保険法第38条第1項第1号に規定する短期雇用特例被保険者および同法第43条第1項に規定する日雇労働被保険者を除く。以下すべてのコース同じ。 |
※7 | 天災その他やむを得ない理由のために事業の継続が困難となったことまたは労働者の責めに帰すべき理由によるものを除く。 |
※8 | 特定受給資格者として資格の決定が行われたものの数が3人以下である場合を除く。 |
Q9.キャリアアップ助成金上の就業規則の問題点を教えてください?
A9. キャリアアップ助成金では、次のように就業規則の設定でミスをすると不支給、半減する場合があります。
№ |
キャリアアップ助成金上の 就業規則の問題点 |
その結果、どうなるか |
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1 |
正社員就業規則に試用期間の規定があると、その期間は正社員とはしない。 ⇒正社員雇用契約書にも試用期間の項目がないこと |
試用期間があると、無期雇用から正社員とみなして、試用期間終了日で転換とみなし(正社員になった期間が遅くなり、3%アップ計算もやり直し)、20万円/1人支給 |
2 | 正社員賃金規定で、賞与または退職金のどちらかは必須とする。 | 賞与、退職金のどちらかがなければ不支給 |
3 | 正社員賃金規定で、昇給は必須とする。 | 昇給がなければ不支給 |
4 | 期間契約社員就業規則、賃金規定では、正社員と基本給、賞与、退職金、各種手当等の一つ以上で違いが必要である。 | 基本給、賞与、退職金、各種手当等の一つ以上で違いがなければ不支給 |
5 | 期間契約社員就業規則、賃金規定の施行日は、正社員転換6カ月前から必要である。 | 正社員転換6カ月前から適用していなければ不支給 |
6 | 期間契約社員就業規則では、具体的な契約期間の定めが必要である。 | 1年間等の契約期間の定めがなければ無期雇用から正社員とみなして、20万円/1人支給 |
Q10. キャリアアップ助成金の正社員転換規程の例を教えてください。
A10. 正社員転換規程の例は下記の通りです。
(正社員への転換)
第33条 勤続6か月以上の者で、本人が希望する場合は、正社員に転換させることがある。
2 転換時期は、随時とする。
3 転換させる場合の要件、および基準は、以下の各号の通りとする。
(1)正社員と同様の勤務期間・日数で勤務が可能な者
(2)代表取締役等の面接、昇格試験に合格した者
(転換後の処遇)
第34条 正社員転換後の労働条件は、就業規則によるものとする。
2 正社員としての勤続年数を計算する場合、パートタイマーとしての勤続年数は通算しない。ただし、年次有給休暇の付与要件及び付与日数を計算する場合は、この限りでない。
Q11.キャリアアップ助成金の3%アップ要件で、算定に含めることができない手当例を教えてください。
A11. 算定に含めることができない手当例は下記の通りです。
算定に含めることが できない手当 |
手当例 |
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① 実費補填であるもの |
・就業場所までの交通費を補填する目的の「通勤手当」 ・家賃等を補填する目的の「住宅手当」 ・寒冷地で暖房費を補填する目的の「燃料手当」 ・業務に必要な工具等を購入する目的の「工具手当」 ・食費を補填する目的の「食事手当」 |
②毎月の状況により変動することが見込まれる等、実態として労働者の処遇が改善しているか判断できないもの |
・本人の営業成績等に応じて支払われる「歩合給」 ・本人の勤務状況等に応じて支払われる「精皆勤手当」 ・所定外労働時間に応じて支払われる「休日手当」 および「時間外労働手当(固定残業代※を含む。)」 ・一定期間のみ適用され将来に減額が見込まれる「調整手当」 |
③ 賞与 | ・一般的に労働者の勤務成績に応じて定期または臨時に支給される手当(いわゆるボーナス) |
Q12. キャリアアップ助成金の正社員転換規程の例を教えてください。
A12. 正社員転換規程の例は下記の通りです。
(正社員への転換)
第33条 勤続6か月以上の者で、本人が希望する場合は、正社員に転換させることがある。
2 転換時期は、随時とする。
3 転換させる場合の要件、および基準は、以下の各号の通りとする。
(1)正社員と同様の勤務期間・日数で勤務が可能な者
(2)代表取締役等の面接、昇格試験に合格した者
(転換後の処遇)
第34条 正社員転換後の労働条件は、就業規則によるものとする。
2 正社員としての勤続年数を計算する場合、パートタイマーとしての勤続年数は通算しない。ただし、年次有給休暇の付与要件及び付与日数を計算する場合は、この限りでない。
Q13.参考になるサイトを教えてください。
A13. 参考となるサイトは下記の通りです。
- キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度)
https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001469672.pdf - キャリアアップ助成金Q&A(令和7年度)
https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001469678.pdf - 3. キャリアアップ助成金改正概要リーフレット(令和7年度版)
https://www.mhlw.go.jp/content/11910500/001450174.pdf